Inkscapeの導入

Inkscapeはドロー系のお絵描きソフト。ドロー系ソフトの扱いは持っておいて損のないスキルだと思うので、今回はフローチャート図でも作りながら学んでみようかと思う。

ちなみに “ドロー系ソフト” とはベクター形式の画像を描くソフト。ベクター形式とは数式(ベクトルデータ)で画像を管理する形式で、画像の拡大縮小で画像品質が変わらないためフローチャートのような幾何学的な画像を描く際に重宝する。これに対してペイントやSAIなんかはペイント系ソフトと呼ばれていて、ラスタ形式の画像を描くソフト。ラスタ形式とは1ピクセルごとに色情報を持たせて画像を管理する形式で、自由に線が描けるし汎用性があるので普及している。ただし画像の拡大縮小で画像品質が劣化する。この辺りの違いについては以下のサイトが詳しい。

参考書的なもの

前から欲しかったそこそこ有名な本がKindleセールで半額以下だったので購入した。ナイスタイミング。

インストール

日本語版配布ページにて最新の安定バージョン: Inkscape 0.92.1をダウンロードしてみた(配布ファイル形式はexeにした)。

インストール時、日本語ウィザードだと以下の画面が立ち上がる。余計なソフトは入れたくないのでCustomインストールとしたが、他ソフトに見られるような不要なものは無かった。最適インストールでOK。

作るフローチャート

簡単過ぎず難し過ぎないものはないかと探していたところ、手元にあったルネサス製マイコンRL78/G14のアプリケーションノートに良さそうなフローチャートがあった。判断の箱もサブルーチンの箱もあったのでこれを作ろうと思う。


– ルネサスエレクトロニクス, RL78/G14 D/A コンバータ 通常モードの使い方 CC-RLより –

作ってみる

Inkscapeでフローチャートを作るということで、以下のサイトを参考にした。

Inkscapeの初期設定
  • 表示>ページグリッドを表示
  • 表示>ワイドをデフォルトに変更(ツールバーが右端から上部に移る)
  • オブジェクト>変形>変形ダイアログの◀ボタンからアイコン化
<処理>の箱を作る

矩形ツールを使って線を引いてみた。このとき、[Ctrl]を押しながらドラッグすると幅と高さの比率を整数比で固定できるらしい。また[Shift]を押しながらドラッグすると始点を中心として描画できた。

黒い。線や塗りの編集はフィル&ストロークなるものを使用するらしい。

フィルとは塗りのことで、ストロークとは線のことのようだ。色のRBG調整やぼかし、線幅・線種の調整ができた。塗りは無しにしたかったが、今回は分かりやすくするため薄いグレーとした。

続いて図形の編集。選択ツール状態でオブジェクトをクリックすると図形編集ができるようになった。もう一度クリックすると次は回転ができるようになる。尚、上部アイコン(高さ指定右側の4つのアイコン)を使うことで編集時に角の丸み半径やフィル&ストロークも追従して変形させるかなどの指定ができるようだ。

数値入力できない問題

今気付いたが、図形サイズや線幅などの数値入力ボックスが有効にならない。これでは正確な図形が作れないため大変困る……と言うかベクター画像の意味が無い。調べてみるとこれは既知の問題で、いたるところに対処法が書いてあった。どうやら日本語環境が原因になっているようだ。

Inkscape で数値入力ができない場合の対処方法 (1) :Tips & FAQによると、一度英語環境で起動してから日本語に切り替えれば問題は解消し、それ以降は日本語でInkscapeが使用できるとのこと。少し面倒な手順だったけれどこの通りに設定したら無事解決した。

<開始・終了>の箱を作る

さっき作った<処理>の箱を複製して角を丸めることにする。選択ツールで編集対象オブジェクトを選択しておいて、その状態で矩形ツールに切り替える。すると選択オブジェクトの角に○が表示されるので、これをいじることで角の丸め調整ができた。

サブルーチン化する箱を作る

これも<処理>の箱を複製し、単純に縦線を入れることにする。直線はペンツールなるもので描けた。計3つのオブジェクトとなり扱いが大変なので、箱と縦線2つを選択して上部のグループ化アイコンでグループ化させておく。

<判断>の箱を作る

ここは少し工夫が必要。まず矩形ツールで正方形を作る。幅と高さを同じ値に指定すれば良い。続いて初期設定でアイコン化しておいた変形ダイアログで45度回転させる。あとは選択ツールでこれを潰すようにサイズ変更する。

箱を配置する

必要な箱は作成できたのでこれらのオブジェクトの幅を数値入力で一致させておく。高さは文字数なりで決まるので適当で良い。また、フローチャートの形になるように並べて整列配置させておくことにする。整列配置のアイコンがあったのでそれを使った。

整列配置にはスナップツールバーを使ってオブジェクトをグリッドにスナップさせるというやり方もあるようだけど、少し面倒そうなので今回は使用しない。尚、画像はスナップツールバーを一時的に上部に配置している。

テキストを配置する

テキストツールで配置できた。フォントは日本語・欧文統一でMeiryo UIとした。各箱とテキストをそれぞれ垂直中心で整列させ、グループ化したものを更に垂直中心で整列させた。またテキスト配置の際にグリッドへのスナップが必要になった。箱サイズに対してグリッドが粗かったため、[Ctrl+Shift+D]でページ設定ダイアログを表示させ、グリッド感覚をX, Yそれぞれ0.05mmとした。

コネクタを引く

コネクタツールを使う。

コネクタツールをアクティブにした状態でオブジェクトを選択すると赤い四角が現れる。これをドラッグして連結したいオブジェクトの四角と繋げばコネクタが引かれた。

コネクタを直角に曲げる場合、対象のコネクタを選択した状態で上部のアイコンから曲げられた。

直角コネクタが他のオブジェクトに重なってしまった場合、迂回させたいオブジェクトを選択して上部のアイコンを押せば良い。

できた。

エクスポートする

まずはエクスポート用にページ設定。ファイル>ドキュメントのプロパティ>ページ>カスタムサイズ>ページサイズをコンテンツに合わせて変更から上下左右のマージンを5mmにしておく(これ、12mmの方が良さそう。PDF形式で保存して入稿する場合による)。続いてページサイズを描画全体または選択オブジェクトに合わせるを実行。これでオブジェクトサイズに用紙サイズが更新される。

続いてファイル>PNG画像にエクスポートより設定ダイアログを出して各種設定を行う。例えば画像サイズ設定。ベクター形式で保存されているため、大きくしても解像度は劣化しない。所望の設定を終えたらエクスポート先を設定してエクスポート。透過PNGが出力される。

その他のファイル形式

今回はPNG出力としたが、通常はベクター画像として管理する。ベクター画像のファイル形式にもいくつかの種類があって、例えばInkscapeで名前を付けて保存すると様々なファイル形式が選択できる。これらのファイル形式の特徴については以下のサイトでまとめられていた。基本的にはInkscape SVG (*.svg)で保存しておけば良さそう。

上記サイト、Inkscapeで作成したファイルを対外的にやり取りする際の注意点について非常に詳しい解説がある。例えば安全なデータの作り方として以下のように紹介されている(テンプレートファイルも置いてある)。

・テンプレートファイルを使用する
・透明度を設定しない(重なっているパスが画像に化ける)
・グラデーションを使用しない(重なっているパスが画像に化ける)
・フィルタを利用しない(重なっているパスが画像に化ける)
・マスクを使用しない(マスクされている箇所が黒色に化ける)
・塗りにアンセットを設定しない(カラーが化ける)
・GIF形式に代表されるインデックスカラーモード画像を使用しない(画像が抜け落ちる)
・ドキュメントの設定の背景色で色を指定しない(エクスポートされないことがある)
・レイヤのブレンドモードを標準から変更しない(データ全体が画像に化ける)
・PDF形式で保存する(避けたい理由がない場合はPDF形式でエクスポートする)

– プリントライ, Inkscapeで入稿データを作成するより –

またInkscapeはCMYKを扱うことが出来ないが、RGBカラーのEPSファイルをCMYKカラーに変換するツールも提供されている(「フィル/ストローク」ダイアログではCMYKタブが用意されているが、色情報はRGBカラーで格納されており、またカラーマネジメント機能が用意されているが、これは擬似的に色を変更して表示する機能でCMYKカラーで保存を行うものではないらしい)。ファイルを印刷業者などに出す場合は再度このページを確認することにする。